打ち上げ花火

最近よく、幼い頃に連れられた花火大会の夢を見る。世間がミレニアムに騒いでいた、まだ世界に家族しか居なかった頃の夢だ。

夢はいつも、女性のアナウンスから始まる。女性が信用金庫の名を読み上げた刹那、花火が打ち上がるのだ。期待に色めく浜辺を包み込むように、その花は乱れ咲く。やがて闇夜に消えるその花の、豊かで儚い色彩に、手に持つボウロも歓喜する。子供はただただ空を見上げている。興奮冷めやらぬ小さな心は、きっと、これから始まる新学期に思いを馳せているのだろう。

目を覚ました時、心に残る哀愁と手に染み付いたボウロの感触が、私をあの体験に縛りつける。夢が固執するあの夏に、なにかを忘れてきてしまったような気がする。縄の跡がくっきりと浮ぶこの心を見ると、そう思えて仕方が無い。