ボクは、ご主人のことが大好きだ。だから、ご主人のお願いは絶対だ。
「君を食べたいんだ」
だから、このお願いを聞いたとき、ボクはどうしようか悩んだ。食べられたら、もうご主人と一緒に居ることはできなくなる。けれど、ご主人のお願いには応えたい。
「食べられたら、もう会えないじゃん」
分かっていることだけれど、認めたくないから、聞いてしまう。会えなくなってしまうのは、すごく寂しいんだもの。会えなくなったら、もしかしたら、ボクのことを忘れてしまうかもしれない。そんな不安を忘れるために、見栄を張る。
「不安な時に強情っ張りになるクセ、治らないね」
そんなボクのことも、ご主人にはお見通しみたい。
「会えなくなっても、いつでも一緒だよ」
お迎えしてくれた時と同じ、まっすぐな瞳でボクを見つめてくる。
「だから、君を食べてもいいかい?」
やっぱり、ご主人はいじわるだ。
尻尾を食べられて、お尻のあたりがズキズキと痛い。けれど、ご主人の楽しそうな顔を見ると、ボクまで嬉しくなる。
「こんなに可愛くて、優しい尻尾なのに、どうして皆嫌うのかな?」
他の皆は気味悪がったのに、ご主人だけは、認めてくれる。もう、尻尾を食べてもらえないことが、すごく嫌だ。トカゲみたいに、また生えてくれれば、また食べてもらえるのに。
かぱり。じゅるじゅる。ご主人の味わう音が聞こえる。頭が痛い。吐き気が込み上げてくる。お昼に食べたご主人特製のパンケーキが、口からあふれてくる。
「少し辛いだろうけれど、大丈夫だよ。すぐに、気持ちよくなれるから」
その言葉を聞いて、頭がぽうっとする。頭が、気持ちいいでいっぱいになる。頭のズキズキはもうなくて、なにも考えられない。めのまえがぼやけて、ごしゅじんがみえる。ごしゅじんが、ぎゅってする。やさしい、ごしゅじん。ボク、しあ、わせ……