微睡みの中へ

果てた時は何時も、微睡みの中へと誘われる。そこは、霧のように儚く、そして、ネオンライトのように悲しい。懐しくも感じるが、どこかは分からない。目を凝らせば凝らす程、その景色は自壊していく。もはや景色ではない景色は、人を嘲笑うかのように白け掛かる。

街の変化と共に、音楽が流れ始めた。短かなフレーズを繰り返すだけのその音は、この不明瞭な街にも文明が存在しているという事を思い起こさせてくれる。

頭蓋骨の周縁を驅けるような旅を終える時は何時も、あの寝室へと連れられる。広い、典型的な和室でありながら、出入りする事のできないその部屋は、人生の終焉を表わしているように思える。

夜が明ける事のないその場所で、私は、何を思い、そして何を感じたのか。そして、その寝室は、私の何を意味するのか。その全ては、微睡みの中へ置いてきてしまった。