ドスン。頭に走る鈍い衝撃が、夢見心地の意識を現実に引き戻した。
五体投地の姿勢を取る僕を、少女らしき生物が見つめている。彼女は人間に極めて近い外見をしているが、その瞳に白目は無く、肌は見る角度に応じて色を変える。まるでシャボン玉のようだ。吸い込まれそうな黒い瞳と、全てを迎合する虹色の肌の、陰と陽の対比が美しい。
水平線まで広がる緑の絨毯と、三つある太陽が風景を形作る。紫色の空には、雲の代わりに大小様々な浮島が、四方八方に散っている。ここは夢か、それとも幻影か。
「落ちて……きちゃったんですね」
鼓膜が、耳に温水を垂らした時のような、むず痒い感覚に襲われる。彼女の声なのだろうか。むず痒さの残す余韻が、なぜだか心地良い。
彼女はなぜ悲しそうな瞳をしているんだ?そして落ちてきたとはなんなんだ?今まで居た場所とは明らかに違う所に居るにも関わらず、不安よりも先に期待が心を支配する。
このような気持ちを最後に感じたのはいつだろうか。忘れかけていた感情が、あの頃の思い出が堰を切って溢れ出る。
これから何が起きるのだろう。もしかすると、朦朧とした意識の中で見た、あのテレビ番組のような冒険が待っているのだろうか。あぁ、楽しみだなぁ。
電光掲示板が、発生した問題について伝えている。談笑する人、スレートに釘付けになる人、武勇伝を語る人……この場にいる誰もが、問題を気にかけず、日常を演じ続けている。
日常は文字を越えるのだ。日常を変えられるのは、験だけなのだろう。そのような気がする。