夜の白昼夢

突発的な旅行で、腹拵えをしようと立ち寄った店が、既に廃業していた事で落胆していた私の目に、「知の??(失念)はこちら」という怪しい立ち看板が目に入る。その看板の風貌に魅力を感じた私は、躊躇い無しに、その看板に従った。

高校にあるような大運動場と共に、受付と思しき小さなプレハブ小屋と、某宗教団体の施設を彷彿とさせる荘厳なアリーナが見えてきた。駐車場らしき物が無い事に困惑しながらも、広めの私道に車を放置し、受付に入る。

受付によれば、入館料は1000円らしい。無料でも、受付の建物で「ものつくり」ができると勧められたが、旅行で金をケチるのも勿体無いと思い、1000円を支払った。隣りの男性は、どちらのコースにするかをコイントスで決めようとしている。


女性を俯瞰で見下ろしている。監獄を想起させる部屋で待機していた(させられていた?)彼女は、突如現れた男性達に連行された。


少女が何かに怯えながら、テーマパークのような場所を駆け巡っている。私は、彼女の見ている物を見る事ができる。オーバーレイされた記憶の断片によれば、怯えている何かは、白衣の男性2名らしい。

悠久に思える時間の後、彼女は、浮遊している「??????(失念、幼少期に体験するであろう事だった事は覚えている)」に手を触れた。触れると同時に、彼女の体が成長する。それと同時に、彼女の思考も少しばかり大人びた物になる。

それを繰り返し、中学生程まで成長した彼女は、今まで駆け巡っていた場所が、3畳程の狭く低い窪みだった事に気付く。彼女は、かつて自分のいた窪みに恐怖を抱いているようだ。

窪みから這い上がった彼女は、外苑に配置された、数多くの書物や食品、風景に次々に触れていった。触れていく度に、彼女は成長し、それと同時に配置された書物等もその質を上げていく。

彼女が、酒を飲める程の姿になった時、天の声が、何か(失念)を問いかけた。その問い掛けを彼女は無視し、突如として現れたターミナルに手を触れた。


天の声は、ガラス張りの部屋に軟禁された女性にインタビューを始めようとしていた。多くのペンギン達がその様子を見守っている。

インタビュー対象の女性は、激昂し、ガラスを破壊。非常口と思しき扉へと向かっていった。


複雑に絡みあった配管と錆で支配された部屋で、女性と男性が口論を繰り広げている。女性の「何故あのような体験をさせたのか」という問いに、男性は神経質な笑いで答える。

私は、知人達の集まった一室で、テレビに映し出された、映画のクライマックスである、その場面を観ていた。作品の肝とも言える、彼らの台詞は、突如として再生の始まったアニメの音によってかき消されてしまった。

映像は、発狂した男性から逃れようとする女性が、丁度突入してきた特殊部隊に保護される事で幕を閉じる。

映画中の特殊部隊にいた、虚ろな目の異常な挙動をする男性は、旅行の時に目にしたコイントスの男性にそっくりだった。


テレビが、B級映画の広告を流し始めた頃、祖母が夕食の準備が終わった事を伝えにきた。そうだ、私は帰省していたんだ。

夕食が何か想像しつつ、テレビの前を後にした。