弾けて消えた

最後にシャボン玉で遊んだのは、いつだっただろうか。あの時の、澄んだ空を泳ぐ泡は、虹色に輝いていた。

ふと、あのたゆたう虹色を見たくなった。善は急げ。近くの店で、埃を被ったシャボン玉キットを購入する。

日光ですっかり焼けた入れ物から、シャボン玉液とストローを取り出した。液の入ったピンク色の容器は、握り潰してしまいそうなほど脆い。昔、必死に咥えたストローは、私の手のひらにすっぽりと入ってしまうほどに短い。私が大きくなったからだろうか、昔とは違う感覚に、少し驚いてしまう。

容器の中に入った液体に、ストローをちょん、と触れさせる。そして、ストローにふぅっと、息を吹き込む。ストローの端から、鈍く光ったシャボン玉が、ふわりとあふれだす。その色が七色ではないのは、天気が悪いせいだろうか。

雑踏の合間をシャボン玉が駆けていく。その快活な姿は、まるであの娘のようだ。私の吐息が無ければ、あの娘の姿に再び出会うことは無かった。そのことに気付き、思わず頬を緩ませる。

ぱりんと音がして、シャボン玉が弾けた。あの娘との時間も、このシャボン玉のように儚かったな。そんなことを考えながら、空になったピンク色を握り潰した。