帰路にて

これは何だ?無味乾燥な情報を映し続ける退屈なサイネージの上隅に、細く細かな白文字が浮き上がっている。

注視している事に文字が気付いた。気付いてはいけない物だったらしい。文字は広がりを持ち、私を飲み込もうと近づいてくる。

エンジンの音と共に、文字が体を包み込む。心地良い甘味とふわふわが、私を襲う。それは、まるでマシュマロのようで。

このふわふわを食べたら、この世界からヨモツヘグイできてしまいそうな気がする。シャクリ。ふわふわを切り裂く音は鋭利だ。

ふわふわを口に運ぼうとしたその時、周りの風景が歪みだした。文字が逃げていく。文明のエーテルは、仲間が増えるのを拒んでいるらしい。人が産み出したものに拒否される、なんとも滑稽だ。

ぷしゅ〜ドアが開く。どうやら家に着いたようだ。エーテルが家から離れていく。その姿に、私は一抹の寂しさを覚えた、覚えてしまったのだ。